2012.09.22
前回、アラスカの話が出たので、この機会にもう少し。
テントを張り、三脚を立て、なかなか姿を見せないマッキンリーを何日も待ち続けたことも忘れ難い思い出ですが、一番心に残っているのは別の場所。
それは、アナクツビック・パスというブルックス山脈北麓、北極圏にある内陸エスキモーの村です。
陸路のアクセスが出来ないこの村にはセスナで飛ぶしかありません。
先住民ヌナミウトが住む小さな村。
この村は、何千頭ものカリブーの大移動ルートに沿って出来たそうです。
まるで西部劇に出てきそうな、荒野と壮大な山々。
行き交う人が皆、手を振ってくれたり、挨拶をしてくれました。
しかし、そんな穏やかな村にはショッキングな現実がありました。
昔から狩りをし暮らしてきたヌナミウトの世界も、白人たちの西洋文明が侵入し、文化が崩壊しかけていました。
生活が変わり、犯罪が起こり、レイプ・自殺が溢れ、精神病を患い、それに耐えた末暴力と化し、酒に逃げ、また犯罪が起こる。
一見平和に見えるこの村も、夜出歩くと危険だと、現地の人に聞きました。
私は教会に泊めてもらっていたのですが、親の暴力から逃げるように教会に来て、泣いている子供たちの姿を目にしました。
神父さんは、アラスカにある100以上の小さな村の現状はどこも同じだと教えてくれました。
平和で皆フレンドリーで、ほのぼのした所だと思っていたので、すごくショックでした。
それに加え、村では食べ物をはじめ何でも高い。テレビや車、家電など、購入するとなると、日本円にして数十万円をかけて大きなプロペラ機で都市から運ばないといけないそうです。
大変な現実があるのだなと、気がめいってしまいました。
子供たちの笑顔だけが救いでした。
暗い印象のアナクツビック・パスになってしまいましたが、私は真実を知れてよかったと思います。