どこか気さくなその男は、村人にとってはよき隣人であり、妻にとっては、よき夫である。
そんな彼にとって、この鋭鋒に囲まれた小さな村は、人生のすべてと言ってもよいかもしれない。
崖の上の僧院を寄り辺に、乾いた大地を耕す人々がいる。 いつも以上に短い夏が、ようやくやってきた。
インドのアルナーチャル・プラデーシュ州は、複数の国に囲まれた小さな地域だ。
だが、そこは、ひと言では言い表せない無数の顔を持っている。
民族、文化、宗教……人々は不思議な均衡のなかで暮らしていた。